ところで、血書の話を聞いて、みんな微苦笑したことであつた、血書もかう流行的になつてはインチキがあるのも当然だらう、黒い心を赤い血で書いて[#「黒い心を赤い血で書いて」に傍点]、それがどうしたといふのだらう、裃をきてゐても不真面目があり、どてらをきてゐても真摯がある、シンケンらしいウソ[#「シンケンらしいウソ」に傍点]を呪ふ。
けふもいちにち、ものをいふこともなかつた、たゞ執筆し読書した、そして月のよろしさをよろこびながら寝た。
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 更けゆけば咳入るばかり(述懐)
・干大根が月のひかりのとゞくところ
 月の暈、春遠くない枝に枝
・月が暈きた餅持つてきてくれた(樹明君に)
 別れよう月の輪を見あげ
[#ここで字下げ終わり]

 二月五日[#「二月五日」に二重傍線]

春近しの感がある、霜のとけるほどあたゝかい。
そこらあたりを漫歩する、漫[#「漫」に傍点]はそゞろ[#「そゞろ」に傍点]と訓む、目的意識のないことを意味する、漫談、漫読、漫想、漫生!
無為而化――そんな一日であつた、たゞ一事の記すべきがあつた、珍客来、Hのおばさんとふうちやんとが立ち寄つたのである、私は彼
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