『ひとり』を契機として孤独趣味、貧乏臭、独りよがりを清算する、身心整理の一端として。
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押しつぶされて片隅の冬鴨のしづか
ひとり雪みる酒のこぼれる
樹明夫人に
・お産かるかつた山茶花のうつくしさ
樹明赤ちやんに
・雪ふるあしたのをんなとしうまれてきた
競つて売られる大魚小魚寒い風
・林となり雪の一しほおちついて
・ゆふやみの恋猫のこゑはきこえる
・冴えかえる水音をのぼれば我が家
赤いものが捨てゝある朝の寒い道
林のなか、おちついて雪と私
・ほいなく別れてきて雪の藪柑子
・つららぶらさがらせてやすらけく生きて
大根みんなぬかれてしまつた霜
・けふも鴉はなく寒いくもり
・ハガキを一枚ぬかるみのポスト
[#ここで字下げ終わり]
一月廿九日[#「一月廿九日」に二重傍線]
雪、あたまはよいが胃がわるい。
あれこれと用事がないやうでなか/\ある、けふは街まで五度も出かけた。
夜、敬坊来、街でほどよく飲んで、街はづれまで送つた。
酒あり、炭あり、ほうれんさうあり。
私もすつかり落ちついた、落ちつき払つては困るけれど。
一月三十日[#「一月三十日」
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