しきる
 お正月の雪がつみました
 雪の鴉のなが/″\ないて
 雪のまぶしくひとりあるけば
・茶の木の雪をたべる
 わが庵は雪のあしあとひとすぢ
 雪ふかうふんで水わくところまで
 雪あしたくみあげる水の澄みきつて
・わらやしたしくつららをつらね
 雪の晴れてうれしい手紙うけとつた
・よう燃える火でわたしひとりで
・雪から大根ぬいた
 雪風、大またであるく
 大根うまい夜のふけた
   また樹明君に
・産後おだやかな山茶花さいてたか
[#ここで字下げ終わり]

 一月廿七日[#「一月廿七日」に二重傍線]

よい朝、つめたい朝、すこし胃がわるくて、すこしにがい茶のうまい朝(きのふの破戒――シヨウチユウをのみ、ウイスキーをのんだタタリ)。
何もかもポロ/\だ、飯まで凍てゝポロ/\。
けふも雪、ちらりほらり。
さすがの私も今日ばかりは、サケのサの字も嫌だ、天罰てきめん、酒毒おそるべし/\、でも、雪見酒はうまかつた/\。
また、米がなくなつた、しかし今日食べるだけの飯はある、明日は明日の風が吹かう、明日の事は明日に任せてをけ――と、のんき[#「のんき」に傍点]にかまへてゐる、あまりよくない癖だ
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