が、なほらない癖だ。
自製塩辛がうまかつた。
午後はだいぶあたゝかくなつた、とけてゆく雪はよごれて嫌だ。
△満目白皚々、銀※[#「怨」の「心」に代えて「皿」、第3水準1−88−72]盛雪、好雪片々不落別処(すこし、禅坊主くさくなるが)、などゝおもひだす雪がよい。
遺書をいつぞや書きかへてをいたが、あれがあると何だか今にも死にさうな気がするので(まだ死にたくはない、死ぬるなら仕方もないが)、焼き捨てゝしまつた、これで安心、死後の事なんかどうだつてよいではないか、死後の事は死前にとやかくいはない方がよからう。
原稿も書き換へることにした、どうも薄つぺらなヨタリズムがまじつて困る、読みかへして見て、自分ながら嫌になつた、感興のうごくまゝに書いてゆくのはよいが、上調子になつては駄目だ。
△奇績[#「績」に「マヽ」の注記]を信じないで、しかも奇績を待つてゐる心は救はれない、救はれたら、それこそ奇績だらう。
自己陶酔――自己耽溺――自己中毒の傾向があるではないかと自己を叱つてをく。
いちにち、敬坊を待つた(今明日中来庵の通知があつたから)。
焚火するので、手が黒く荒れてきた、恐らくは鼻の穴も燻ぶつ
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