なすべからずぢや。
あんまり寒いから、餅粥をこしらへて腹いつぱい詰めこんだら、すつかりあたゝかくなつた。
雪景色はまことにうつくしい、枝や葉につもつた雪、ことに茶の木、松の木、南天の雪、とりわけて柿の裸木にところ/″\つもつた雪、柿がよみがへり、雪がいき/\とする、草の芽がすこし雪の下からのぞいてゐるのはいぢらしい。
△雪の風情は雪を通して観る自分の風姿である。
樹明君から来信、子がうまれ句がうまれる、祝祷々々。
地下足袋はいて雪風にふかれて、駅のポストまで、樹明君へよろこびのはがきをだすために。
帰途、風邪をひきさうなので、例の店に寄つて一杯ひつかける、むろんカケで。
雪見に酒がないのは、かへつて雪をよく見ることができる、料理にダシや味の素をいれないとき、その物のうまさがわかるやうに。
午後、態人が樹明君の手紙を持つて来た、これは意外な好消息だつた、待つものは来ないで待たないものが来た、何はともあれ、ぜひはやくいらつしやい、一升さげてよ、待つてる/\。
△雪のしづけさ(雪のさびしさではない)、雪のしゞま[#「雪のしゞま」に傍点]を感じる、それは自己観照である。
わらやつもる雪(庵もさ
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