・雪、雪、雪の一人
・雪はかぶるままの私と枯草
・小雪ちほ[#「ちほ」に「マヽ」の注記]ら麦田うつふたりはふうふ
 雪かぶる畑のものにこやしやる
・からみあうて雪のほうれんさうは
・雪となつたが生れたさうな(樹明君さうですか)
・安産のよろこびの冴えかえる(樹明君さうでしたか)
・もう暮れたか火でも焚かうか
 恋猫がトタン屋根で暗い音
・夜ふけの薬罐がわいてこぼれてゐた
 雪の夜は酒はおだやかに身ぬちをめぐり
・雪がふるしみじみ顔を洗ふ
 たれかきたらしい夜の犬がほえて
 火鉢に火がなくひとりごというて寝る
[#ここで字下げ終わり]
 一月廿六日[#「一月廿六日」に二重傍線] 旧正月元日。
すこし早目に起きた、今朝、どこからも送金がないやうならば、三八九送料の不足をかせぐために山口へ行乞に出かけるつもりで。
ところが、雪だ、このあたりには珍らしい雪だ、冷えることもずゐぶん冷える、何もかも凍つてゐる。
まづ雪見で一杯といふところだらう、誰か雪見酒を持つてこないかな。
けさは驚嘆すべき事があつた、朝魔羅が立つたのである、この活気があるからこそ句も出来るといふものだ、スケベイオヤヂとけ 
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