はくもつて寒かつた、しかしとにかく、好日好事たることを失はない。
朝、紙を買ひにゆく、インフレ景気は私にも影響を及ぼして、紙も二割の値上をするといふ。
三八九印刷終了、揃へる、綴ぢる、なか/\忙しい。
手紙も来なければ人間も来ない、鴉が来て啼くばかり。
夜は餅を焼いて食べた、何とまあ餅のうまいこと。
こゝで私は重大な宣言[#「重大な宣言」に傍点]をする、――今後は絶対に焼酎と絶縁[#「焼酎と絶縁」に傍点]する、日本酒、麦酒以外の酒類は飲まないことにしよう、これも転換の第一歩といへよう。
[#ここから2字下げ]
・霜にはつきり靴形つけてゆく
小春日の畦をつたうてやつてきた
・冬夜の瞳ぱつちりうごく
火の番と火の番とぬくい晩である
・あたたかなればよもぎつむ
[#ここで字下げ終わり]
一月廿四日[#「一月廿四日」に二重傍線]
さむい、つめたい、小雪ちらちら。
あるだけの米を白粥にして置く。
今日の食事は、三度が三度とも、米と水と餅と塩とのちやんぽん[#「ちやんぽん」に傍点]だつた。
餅をやいて食べながら三八九仕事、やうやう終了。
うれしいな、餅はうまいな、好きだから、貧乏だから。
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