水準2−92−68]餅といつしよに。
二週間ぶりに入浴、帰途、金策の相談が出来た。
魚行商のおばさんはほんとうに感心な女性だ、悪病の夫を看護しつゝ、二人の子供を育てつゝ、朝から晩まで働らきつゞけてゐる、信仰心を持つてゐるからやれるのだ、前身が娼妓だつたと聞いて、私は頭がさがつた、自分が恥づかしかつた。
餅もうまかつた、鰯はさらにうまかつた。
夜、樹明君がバリカンを持つてきて、理髪してくれた、何ともいひやうのない深切だ、餅も貰へた、句集代壱円も受取つた、紙代をとつてをいて、残りで酒を買つてきて、すこし飲んだ、かういふ酒はめつた[#「めつた」に傍点]に飲めるものぢやない。
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・冬ぐもりひさ/″\湯にいり金を借る
・石垣の日向にはビラも貼つてある
・雪空から最後の一つをもぐ
・冴えかえるながれをふんで下る
 墓場の梅はほつ/\咲いて
  今日の買物
一金十八銭  酒二合
一金十七銭  焼酎一合五勺
一金七銭   バツト
一金四銭   なでしこ
  〆金四十六銭也
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 一月廿三日[#「一月廿三日」に二重傍線]

午前は晴れてあたゝかだつたが、午後
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