「心を白紙にせよ」に傍点]、そこに書かれた文字をすつかり消してしまつて、そして新らしい筆で――古い筆でもよろしい――新らしい文字を――古い文字でもよろしい――はつきりと書け。
私の行乞姿を見ても、そこらの犬が吠えなくなつた、尾をふつては来ないけれど、いぶかしさうに眺めてゐる。
△貧乏は時々よい事を教へてくれる、貧しうしてまづいものなし、きたないものなし。
あいかはらず、楢の葉が鳴る、早寝の熟睡。
[#ここから2字下げ]
・まとも木枯のローラーがころげてくる
・によき[#「によき」に傍点]と出てきた竹の子ちよん[#「ちよん」に傍点]ぎる(改作)
  今日の行乞所得
一、米一升七合
一、金十四銭
  今日の買物
一金三銭    切手一枚
一金四銭    なでしこ小袋
一金三銭五厘  醤油一合
一金五銭五厘  焼酎五勺
  〆金十六銭
   これで嚢中は文字通り無一文!
・けふの御仏飯のひかりをいたゞく
・何やらきて冬夜の音をさせてゐる
[#ここで字下げ終わり]
一茶の次の二句はおもしろいと思ふ。
[#ここから2字下げ]
節穴や我が初空もうつくしき
うつくしや障子の穴の天の川
[#ここで字下
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