らう、フレツシユで、あまくて、何ともいへない味だつた、飯とても同じこと、おいしいお菜を副へて食べると、飯のうまさがほんとうに解らない、飯だけを噛みしめてみよ、飯のうまさが身にしみるであらう、物そのものの味はひ[#「物そのものの味はひ」に傍点]、それを味はなければならない。
大根の浅漬に柚子を刻んでまぜた、そのかをりはまことに気品の高いものであつた、貴族的平民味[#「貴族的平民味」に傍点]ともいふべきであつた。
△私は考へる、食べることの真実、くはしくいへば、食べる物を味ふことの真実[#「真実」に白三角傍点]を知らなければならない。
昨夜、樹明君から貰つた干魚はうまかつた、もうほとんどみんな食べてしまつたほど――天ヶ下にうまくないものはない!
△今日の行乞は、ほんとうに久しぶり――半年ぶりだつた、声が出ないのには閉口した、からだがくづれるのに閉口した、必ずしも虚勢を張るのではない、表面を飾るのではないけれど、行乞相は正しくなければならない、身正しうして心正し(心が正しいから身が正しくなるのであるが、それと同様に)、我正しうして他正し、それは技巧ではない、表現である。
△心を白紙にせよ[#
前へ
次へ
全86ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング