のがなくなつた、塩と砂糖とが残つてゐるだけだ(いやまだ/\野菜と水とがある)。
夜はしづかに読書した、火鉢に火があり、煙草入に煙草がある、私は幸福だつた。
かうして、私は閑寂枯淡の孤独生活[#「閑寂枯淡の孤独生活」に傍点]にはいることができるやうになつた、私は私自身を祝福する。
悠々淡々閑々寂々。
樹明君も敬治君も、緑平老も井師も喜んで下さるだらう。
自分の性情がはつきりしてきた、随つて自分の仕事もはつきりした、私はかういふ私としてかういふ仕事をすればよいのだ、さうするほかないのだ。――
しめやかなうれしさがからだいつぱいになつた。
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・草のそのまま枯れてゐる
 そのまま枯れて草の蔓《ツル》
・楢の葉の枯れてかさかさ鳴つてゐる
・燃えてあたたかな灰となつてゆく
・食べるもの食べつくし何を考へるでもない冬夜
・いたづらに寒うしてよごれた手
・冬日まぶしく飯をたべない顔で
・落葉ひよろ/\あるいてゆく
 ひよろ/\あるけばぬかるみとなり落葉する
・落葉して夕空の柚子のありどころ(再録)
[#ここで字下げ終わり]

 一月十九日[#「一月十九日」に二重傍線]

雪もよひ
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