、手紙は来ない、行乞は気がすゝまないからやめる、といふ訳で、野菜食[#「野菜食」に傍点]がはじまる、菜葉(大根葉をも)をラードでいためて塩で味付けするのだつた。
五厘銅貨を握つて村のデパートへ出かける、きのふ、おばさんの諒解が得てあるので、焼酎一合と豆腐二丁とを買うて戻る(此代金十六銭、まだ二銭あまつてゐる!)、飯をたべないものだから、何となくよろ/\する(酒好きは酒好きですね、間違なく)。
朝は砂糖湯、昼は野菜、それから焼酎と豆腐だつた、これではゼイタクすぎる、まつたくさうだ。
とにかく山籠と思へば何でもない、いや、けつこうすぎる、かういふ機会を活用して、かういふ食事をしなければウソだ。
おちついた、おちついた、おちつきすぎるほどおちついた(すぎる[#「すぎる」に傍点]といふ言葉をつかひすぎる!)。
……焼酎はにがかつた(いかに酒のうまいことよ)、豆腐はからかつた(こゝで味噌醤油の必要なことがわかる)、でも、おかげで、腹がふくれて、ほろ酔気分になつた。
その気分で原稿を書いた、曰く、乞食漫談[#「乞食漫談」に傍点]、曰く、其中庵日記[#「其中庵日記」に傍点]。
さらに書きたいのが、過
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