真実を以て皆共に仏道を成ぜんことを。
昭和七年十二月二十四[#「四」に「マヽ」の注記]日
[#地から3字上げ]耕畝九拝
十二月二十四日
雪もよひ、なか/\寒い。
米がなくなつた(煙草も)、米なしで暫らく暮らすのもよからう、事々皆好事だ。
山を歩いて、何か活けるやうなものはないかと探したけれど、何も見あたらない、仕方なしに歯朶(ネコシダ?)を五六本持つて戻つて活ける、なか/\よい。
昼食はそば粉をかいて食べる、菜葉をそへて。
大根、ほうれんさう、ちしや、新菊は食べても食べても食べきれない、何といふ豊富!
夕方からあたゝかく雨になつた、夕食はすひとん[#「すひとん」に傍点](関東大震災当時はこれが御馳走だつた、一杯五銭で)。
夜ふけて雨の音がよかつた、いつまでも眠れなかつた。
△私は聴覚的性能の持主――耳の人、或は声の詩人とでもいはうか――であるが、聞き分けるよりも聴き入る方だ[#「聞き分けるよりも聴き入る方だ」に傍点]。
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・雪もよひのみかんみんなもがれた
・風に最後のマツチをすらうとする
[#ここで字下げ終わり]
十二月廿五日
けさは蕎麦汁二杯だけ
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