罎がもう五六本並んでゐる、まことに其中庵風景の豪華版だ!
大風一過[#「大風一過」に傍点]、うらゝかに木の葉ちるかなである[#「うらゝかに木の葉ちるかなである」に傍点]。
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・あぶない橋をわたれば影
 星が流れる二人で歩く寒いぬかるみ
  月並一句、自嘲自戒
 われとわが□をせばめたる茶の木哉???
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 十二月廿三日

久しく滞つてゐた水が流れはじめたやうな気分だ、流れる、流れる、流れるまゝに流れてゆく。
身辺整理、出すべき手紙をだし、捨つべきものは捨てた。
自然を味へ[#「自然を味へ」に傍点]、ほんとうに味へ、まづ身を以て、そして心を以て、眼から耳から、鼻から舌から、皮膚から、そして心臓へ、頭へ、――心へ。
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・小春日をあるけば墓が二つ三つ
・風をききつつ冷飯をかみつつ
・凩のふけてゆく澄んでくる心
     △ △ △
我昔所造諸悪業
皆由無始貪瞋癡
従身口意之所生
一切我今皆懺悔
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今日今時、我と我が罪過を悔い悪行を愧ぢて、天上天下、有縁無縁、親疎遠近、一切の前に低頭し合掌す、願はくは此
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