。
あたゝかい手紙(平野さんから)、あたゝかい小包(山野さんから)。
△不幸の幸福[#「不幸の幸福」に傍点]。
よくてもわるくても生きてゐる人間だ[#「生きてゐる人間だ」に傍点]。
酒は一人で飲むものぢやない、といふやうな訳で、地下足袋を穿いて、雨のぬかるみを訪ねたら、樹明君不在、それから歩いた歩いた、飲んだ飲んだ、ワヤのワヤになつた。
誰かにいはれるまでもなく、私は私の人格がゼロであることを知りぬいてゐる、いや、私には人格なんかないのだ。
[#ここから2字下げ]
・冬雨の遠くから大きな小包
[#ここで字下げ終わり]
十二月廿六日
よいところがあればわるいところがある、わるいところがあればよいところがある、重点はその分量[#「分量」に傍点]如何にある。
心一つ、――心一つの存在である。
雨そして酒、外に何の求むるところぞ。
[#ここから2字下げ]
・冬ざれの水がたたへていつぱい
・ひとりの火の燃えさかりゆくを
[#ここで字下げ終わり]
十二月廿七日
ウソもマコトもない世界に生きたい。
ウソといへばみんなウソだ、マコトといへばみんなマコトだ。
十二月廿八日
雨、あたゝか
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