、五銭 豆腐二丁
合計金 七十七銭也(残存金二十三銭)
[#ここで字下げ終わり]
菜葉を漬けた、重石をたづねてあるいたが。
一杯やつてゐるところへ、樹明兄が一升さげて来た、山村の饗宴がはじまる、おしまひには街へまで延長する、そしてとう/\わや[#「わや」に傍点]になつてしまつた。
かういふ風では罰があたる――と考へてゐたが、果して罰があたつた、一切我今皆懺悔、しつかりしろ。
十月二日
近頃にない熟睡だつた。
晴、昨夜の残酒を傾ける。
省みて愧ぢない生活[#「省みて愧ぢない生活」に傍点]。
郵便配達夫が柿を御馳走してくれといふ、私の柿ではないけれど、さあさあ好きなだけ食べなさい、食べろといはれる私の代りに、うまいかね。
萩が咲きこぼれてゐる、煙がうす/\のぼつてゐる。
終日籠居、孤独と沈黙と、そして閑寂と沈潜との一日だつた。
家の周囲の雑草が刈られた、萩も薄もみんな。
こうろぎを聴いてゐると、ずゐぶん上手下手がある、濁つたのがだん/\澄んでくるのが解る、虫の声もなか/\複雑だ。
咳嗽がひどくて苦しんだ、しかしそれが同時に私を自堕落から救ふのも事実である。
十月三日
晴、
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