エゴぢやない、自然と自己との融合調和からくるよろこびだ(自分の所有する土地で出来た野菜だからうまいといふのはエゴだらう)。
死期遠からず[#「死期遠からず」に傍点]――何となくこんな気分になつた、心臓の悪いことは自分でもよく知つてゐるが、それよりほかに、何物か自分に近づいてくるけはひを感じる。
十二月十日
寒い、霜、氷、菜葉を洗ふ手がかじけた、このごろは菜葉ばかり食べてゐる、ほかに食べるものもないが。
△手といふものはありがたいものだと、手をうごかしながらつく/″\思つたことである、自己感謝[#「自己感謝」に傍点]とでもいふか。
貧苦と貧楽[#「貧苦と貧楽」に傍点]、御酒漫談[#「御酒漫談」に傍点]、などゝ他愛もない事を考へながら三八九の発送準備、それにつけても郵送料二円ほど欲しいなあ。
晩方、Jさんが白菜二玉持つてきてくれた、見事々々。
私の生活を羨むなかれ、これはウソからでたマコトだよ。
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・いつしか明けてゐる茶の花
・ひらりとおちたは蔦のいちまい
・よい月夜の誰かを待つ
[#ここで字下げ終わり]
十二月十一日
今日ですつかり三八九の仕事がをはつた
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