身をも忘れてしまへ。
△型にはめて生きた人間を評して貰ひたくない、生身は刻々色もかはれば味もかはる、それでよいのだ、それが本当だ、私は私でたくさんだ、山頭火は山頭火であればけつかうだ。
食べても食べてもほうれんさうが食べきれない、といふやうな事を思ふのも人間のエゴだらう。
△木の実の味が解らないでは、自然を十分に味へない、自然は眼でも耳でも舌でも――からだぜんたいで味はなければならない。
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世の中はウソもマコトもなかりけり
火はあたゝかく水はすゞしく
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これが三八九を綴ぢながらの感想だつた。
左足が神経痛で、少々びつこをひくやうになつた、けつかう、けつこう、足が一本になると身持がよくなる、よくならずにはゐまい(両足ともいけなくなつては、いつぞや樹明君と話しあつたやうに、自殺しなければなるまいから困る、自殺そのものには困らないけれど、後始末に困るだらうと思ふ)。
夜は樹明君が手伝つてくれた。
私の大根は葉ばかり出来て根が出来ない、大根でなく大葉だ、それでも今朝おろしにして食べたらうまかつた。
△自分の手で作つた野菜はヨリうまい、これは
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