ちる
・冬日の葉からとべばとべる虫
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 十二月八日

しぐれたり照つたり、何だか小雪でもふりさう。
やつと三八九出来、すぐ発送したいのだが、郵便料がない、それでもまあこれで一安心、重荷をおろしたやうな心持。
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冬は濁り井のなぐさむすべもなくて
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これは実感そのまゝだ、濁り水を常用してゐるせいか、先日来腹工合が妙である。
一週間ぶりに入浴、さつぱりして夜食は白粥。
強ゐられた善人はみじめだ、強ゐられた貞婦、強ゐられた高僧。
△人間は買ひかぶられるよりも見さげられた方がよい。
△ムリ[#「ムリ」に白三角傍点]のない生活、ムラ[#「ムラ」に白三角傍点]のない生活、それは必ずしもムダ[#「ムダ」に白三角傍点]のない生活ではないが。
もう凩だ、冬雨だ。
樹明君よい御機嫌でお土産持参、有難く頂戴、それは醤油一升罎、お正月までは大丈夫だ。

 十二月九日

晴れ/″\とした、自然も人間も。
昨日、発行届を出すのに、内務大臣の名を忘れてゐた、中橋か、山本か、まゝよとばかり中橋にしたら、山本だつた。
何もかも忘れるとよいのに、自分自
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