に行く
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例によつて街を飲みつ[#「つ」に「マヽ」の注記]いたが、三人とも無事に帰庵、三人が枕をならべていつしよに寝てゐるのは珍妙だつた。
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・茶の花や身にちかく冬のきてゐる
・落葉して大空の柚子のありどころ
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 十二月四日

お誂向の雨、迎酒なかるべからずで、また街まで酒買ひに、……それからワヤ、大ワヤ、……昨夜のメチヤに今日はクチヤを加へた!

 十二月五日

昨日のワヤのつゞき、ムチヤクチヤだ。
敬坊をおきざりにして帰庵する、そこらを片づけてすこしおちつく、ぐつすり寝た。

 十二月六日

鉄筆を握りつゞける。
樹明来、家庭の空気が険悪ださうな、あたりまへだ、梅川忠兵衛のやうな場面を演じた罰だ、おとなしくあやまつて、しばらく謹慎すべし、あなかしこ。
風がふく、いやに身にしみる風だ。

 十二月七日

終日、三八九の仕事。
夜おそく樹明君が来てお土産の新聞包をひろげた、巻鮨、柿、ザボン、焼魚、それは或る家によばれて貰つたのだといふ、酒はないがおいしかつた。
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・住みなれて茶の花のひらいては
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