・茶の木も庵らしくする花ざかり
・すくうてはのむ秋もをはりの水のいろ
・冬山をのぼれば遠火事のけむり
・あたゝかくあつまつてとんぼの幸福(とんぼの宿)
・赤さは日向の藪柑子
・とんぼにとんぼがひなたぼつこ
 ちろ/\おちてゆく冬めいた山の水
・ふめば露がせなかに陽があたる
    □
・お地蔵さまのお手のお花が小春日
    □
・めつきりお寒うなりました蕪を下さつた
 霜の落葉にいもりを汲みあげた
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夜、樹明君が酒とソーセージとを持つて来庵、酒もうまい、ソーセージもうまい。
更けて街まで送つてゆく(といふつもりで出かけたが、途中すぐ別れた)、そしてそこらをたゞ歩いて戻つた、歩けば心がなぐさむといふのか、さりとは御苦労千万。

 十二月二日

日々好日でもない、悪日でもない、今日は今日の今日で沢山だらう。
鉄筆を握つたり、肥柄杓を握つたり。

 十二月三日

第五十回誕生日[#「第五十回誕生日」に傍点]、形影共に悲しむ風情。
午後、樹明来庵、程なく敬坊幻の如く来庵、三人揃へば酒、酒、酒。
酒が足りなくて街へ。――
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