男どころか、泥沼でもがく動物だらう。
やつぱり酒だ、最後には涸れた川へ転落した。
十一月廿七日
敬坊のやつてくる日だ、予期すると先月のやうに違約されたとき癪にさわるから、待たないやうにして待つてゐるのだ。
午後になると、樹明君が待ちきれなくてやつてきた、連れだつて敬坊の実家附近へゆく、ゐた、ゐた、今、帰つたところだと敬坊がいふ、坊ちやんがついてゐる、奥さんの用心ぶかい策かも知れない、瘤つきの敬坊! 防腐剤添加の敬坊、坊ちやんは私を忘れてゐなかつた。
途中、茶店で食べた鰯の卯の花鮨はうまかつた。
樹明君が鯨肉、私が海老雑魚、敬坊がヱソを買ふ、酒も醤油も彼に買はせる、たいへんな御馳走だ、まづ鯨の酢の物、ヱソの刺身、たゝき魚の吸物、海老の煮付、等、等、等だ。
其中庵の饗宴だけでは足らないので、三人揃つて街へ、そして例の窟[#「窟」に白三角傍点]で要領よく飲んだ、この三人で、この始末は大出来々々々。
十一月廿八日
しづかな一日、しぐれがわびしかつた、友がこひしかつた。
昨日、樹明君から袷、敬坊から帽子を頂戴した。
十一月廿九日
朝早くF家から蕪と柿とを貰つた、そしてSから冬着
前へ
次へ
全92ページ中73ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング