い米をいたゞいた、お米観音とでもいはうか。
柿もぎにきたS家の子供がやたらに花をむしる、それをSがむやみにむしるなと叱る、しかしS自身が花をむしつてゐるのだ、彼はそれを花瓶に活けるではないか!
胃袋が強すぎて頭脳が弱すぎる、それが私だ、また、胃袋は正直で頭脳は横着だ、それは誰もだ。

 十一月廿五日

けふもしぐれる、身心やゝよろしくなる。
こほろぎの子、あぶらむしの子、子は何でもかあいらしい。
雨に汚れ物――茶碗とか鍋とか何とか――を洗はせる、といふよりも洗つてもらふ。
俳句講座を漫読して、乙二[#「乙二」に白三角傍点]を発見した、何と彼と私とはよく似てゐることよ、私はうれしかつた、松窓七部集が読みたい、彼について書きたい。
けふはほんとうにしみ/″\としぐれを聴いた。
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・さんざふる夜の蠅でつるみます
・たゞ一本の寒菊はみほとけに
・山茶花さいてお留守の水をもらうてもどる
・誰かきさうな空からこぼれる枇杷の花
・しぐれたりてりだしたりこゝそこ茶の花ちつて
・冬蠅とゐて水もとぼしいくらし
   改作二句
 この柿の木が庵らしくするあるじとして
 こゝにかうしてみ
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