きて一杯やつてゐるところへ樹明君来庵、さしつさゝれつ、こゝろよく飲んだ、そして街までいつしよに出かけて、また二三杯。
私はいつものやうでなく、しつかりしてゐたが、樹明君は日頃に似合はず酔ひつぶれてしまつたらしい(私は先に帰つてきた)、君の酔態を観てゐると、私は私自身の場合よりも悲しく感じる。
十一月二十日
未明に樹明君がひよろ/\してやつてきた、そして一日寝て暮らした、みじめな二人だつた。
樹明君は夕方に帰宅して、またやつてきた、あの良妻をごまかしたのである、私は家庭争議の起らなかつたことを喜ぶと同時に、君の酒癖を憎まずにはゐられなかつた。
樹明君の妻君に幸福あれ。
今日一日、私はめづらしく冷静だつた。
十一月廿一日
私の近来の生活はただ愚劣[#「愚劣」に白三角傍点]の一語に尽く。
十一月廿二日
独坐、読書。
十一月廿三日
すこし気分がよくなつた、一升借りてきて樹明君と飲む。
夜、街の人々といつしよに飲んだ、可もなく不可もない酒だつた、樹明君から或る家庭争議を聞いた、情痴といふやうな事は私にはよく解らない。
十一月廿四日
しぐれ、しぐれ、しぐれ。
ありがた
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