る、柿、枇杷、棗。――
[#ここから2字下げ]
・秋はほがらかな日かげ、もう郵便がくるころ
・みほとけはひとすぢのお線香まつすぐ
・落葉ふる奥ふかくみほとけを見る
[#ここで字下げ終わり]

 十一月五日[#「十一月五日」はママ]

今日一日は殆んど寝て暮らした、もつたいないことである。
昨夜はやつぱり飲みすぎ歩きすぎだつた、しかし脱線[#「脱線」に傍点]ではなかつた、混線[#「混線」に傍点]程度にとゞまつた。
それでも労れた、何しろ半月ぶりだつたから――もつとも時々あのぐらゐの酒と乱歩とがないと、生存してゐられない。
[#ここから2字下げ]
 寝てをれば花瓶の花ひらき
・今日の落葉は落ちたまゝにしておかう
[#ここで字下げ終わり]

 十一月六日[#「十一月六日」はママ]

朝寝した、晴れてゐる、元気回復、何でもやつてこい!
敬坊から来信、「松」十一月号が来る。
落葉を掃きつゝ、身も心ものびやかに、大空を仰ぎつゝ。
何となく人の待たれる日、といつて誰も来ないけれど。
正午のサイレンをきいてから湯屋へ、かへりみち、墓場の黄菊(これがほんとうの野菊であると思ふ)を無断頂戴して来て、仏前に
前へ 次へ
全92ページ中64ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング