供へ奉つた。
銀杏かゞやかに、山茶花はさみしく。
このあたりには雀がゐない、どうした訳だらう、私は雀に親しみを持つてゐる。
裏を歩いたついでに拾うてきた枯枝で、ゆふべの粥がうまく出来た、何でもない事だけれど、ありがたい事である。
日ごろはつゝましく、あまりにつゝましく、そして飲めばいつも飲みすぎる、――これも性であり命である、一円をくづして費ふ人もあれば、そのまゝ費ひ果す人もある。
業報は受けなければならない、それは免かれることの出来ないものである、しかし業報をいかに[#「いかに」に傍点]受けるかはその人の意志にある、そして生死や禍福や、すべてを味到することが出来る力は信念にのみある。
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もう穴に入るまへの蛇で日向ぼこ
・ほがらかにして親豚仔豚
・夕日の、ひつそりと落葉する木の
・音がして落ちるは柿の葉で
・あれは木の実の声です
・夜はしぼむ花いけてひとりぐらし
[#ここで字下げ終わり]
夜に入つてから樹明君来庵、渋茶をすゝりながらつゝましく話して別れた、月も林のかなたに、汽車の響がもうだいぶ更けたらしい調子になつてゐた。
アルボースせつけんのきゝめが意外にてき
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