不機嫌だつた、私は内心、気の毒やら申訳ないやらで恐縮したことである。
関門日々新聞の九星欄を見ると、――一白の人、紅葉の美も凋落し葉を振ひ落せし如き日――とある、これではたまらない、何とかならないものかな、もつとも、私はいつも裸木だが!
山の野菊(嫁菜の類)、龍胆がうつくしかつた、ひたゝきもめづらしく可愛かつた、この小鳥を見たのは何年ぶりだらう、山柿や櫨紅葉のよいことはいふまでもない。
りんだうを持つてかへつて活けた、山の花として満点。
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・みんなもがれてこの柿の木は落葉するばかり
・この山奥にも田があり蝗があそんでゐる
・りんだうはつゝましく蔓草のからみつき
・見はるかす野や街や雲かげのうつりゆくを
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十一月三日
天地玲瓏として身心清明、菊花節。
ほんとうによいたよりがあつた、同時にそれは恥づかしい(受取人の私には)たよりでもあつた。
句集を寄贈発送する、ほがらか/\。
樹明君来庵、ひさしぶりに飲んだ、酔うて歩いた、歩いてまた飲んだ、別れてから少ワヤ、おそくかへつてきてお茶漬をたべる、独身者は気軽でもあればみじめでもある。
葉が落ち
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