福だ、やつぱりメグマレテヰル!
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朝早い柿をもぐより食べてゐる(樹明君に)
・この山里へ朝からひゞくは柿買車で
わが庵の更けては落葉の音するだけ
・道はひとすぢの、バスがくる蟹がよこぎる
・重荷おもくて高きへのぼるたかい空
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ちよつとそこらの枯枝をひろひあつめたゞけで、茶を入れるほどの湯はわいた、その茶のよろしさ、あたゝかう身ぬちへしみ入つた。
仏説四十二章経を読んだ、恥ぢ入つた、出家沙門とは何ぞや、あゝいたい、いたい、いたい。
今日の新聞の運勢欄が眼についた、かう書いてあつた、――一白の人、満山紅葉の錦を以て飾られし如く美々し、――これは美々しすぎる、そんなに美々しくなくてもよろしい、ちよい/\、ところ/″\美々しければ結構ですよ、それはとにかく、もう紅葉シーズンとなつた、見わたす山の雑木紅葉がうつくしい、石の鳥井に銀杏のかゞやき、白壁土蔵に楓の一もと、などはありふれた月並風景だけれど、さすがに捨てがたいものがある、小高い丘の雑木二三本、赤く、黄いろく、もみずつてゐるのは、たちどまつて眺めずにはゐられない。
私が秋晴半日逍遙してゐる間
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