出て困る、喘息になりはすまいかと自他共に心配しないでもないが、不死身にちかい私のからだか[#「か」に「マヽ」の注記]らと放任して安心してゐる、また、このぐらゐの苦しみはあつてよろしい、近来どうも安易に流れ自堕落になつてゐるから!
夜は樹明兄に招かれて、学校の宿直室で夕飯を御馳走になつた、一杯やつたことは書くまでもあるまい、咳嗽薬まで戴いてきた。
今夜の酒は何とよい酒だつた、そしてよい酔だつた。
今日の特種は、竈《クド》をこしらへたことである、なか/\よく出来た、自分ながら感心する(樹明兄も感心してくれた)、これで炭代がういてくる、それだけ酒代が。
九月廿八日[#「九月廿八日」はママ]
好晴、伐木の音がこゝろよくきこえる。
樹明さんが吉野さんを連れてきて庵を描いて下さつた、三八九[#「三八九」に傍点]復活号の裏表紙に刷るのである、私は文字で庵を写さう。
夜、国森令弟わざ/\海の幸――小鯛一籠――を持つてきて下さつた、魚に添へてある青紫蘇の香が何ともいへないフレツシユだつた、早速焼いて酢に漬けた、あゝ、この好下物あつて酒なしとは……、うらめしや。
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・しづけさは
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