私の飲みすぎ脱線だ、酔つぱらつて路傍に寝てしまつた(後から聞けば、私の寝姿を見た者が二三あるらしい)、とう/\帰庵かなはずしてK婆さんの家で夜を明かした、そして未明、ふら/\歩いてゐたら、非常線にひつかゝつた、しかしそこは海千河千の私だ、うまくいひぬけた、『ずゐぶん早い散歩ですねえ』と刑事先生びつくりしてゐた!
よい酒とわるい酒とがあるやうに、よい酔とわるい酔とがあるとすれば、昨夜の酒は、いや今夜の酒はたしかにわるい酒であり、わるい酔だつた。
インバイに戯れ、ハダシで散歩するなんてことは悪趣味ぢやない、悪行そのものだ、ことに禅宗坊主に於てをやである。……

 九月廿七日

曇、雨、晴れでないので助かつた。
風呂へはいつて一切を洗ひ落して戻ると、樹明さんと武波さんとがにや/\して待つてゐられた、悪行露見、罪業深重、いさぎよく白状して呵々大笑したことである、さうする外ないではないか!
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草の日向の蛇がかくれる穴はあつた
秋の蚊のないてきてはたゝかれる
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 九月廿八日

大連の青葉君から、熊本の元寛君から、どちらもうれしいたよりがあつた。
咳が
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