もなく、起きるでもなく、読むでもなく、考へるでもなく、――生きてゐるでもなく。――
あんまり気がめいりこむから、歩くともなく歩いた、捨てられた物を拾ふともなく拾ひつゝ(それはホントウのウソだ!)。
[#ここから2字下げ]
・ただ百舌鳥のするどさの柿落葉
・放つよりとんでゆく蜂の青い空
子供も蝗もいそがしい野良の日ざしかたむいて
・秋の野のほがらかさは尾をふつてくる犬
たそがれる家のぐるりをめぐる
・空からもいで柚味噌すつた
・真昼あはたゞしいこうろぎの恋だ
・秋の夜のふかさは油虫の触角
秋の夜ふけてあそぶはあぶらむし
障子たゝくは秋の夜の虫
・秋ふかうなる井戸水涸れてしまつた
こゝろつめたくくみあげた水は濁つて
□
・みんないつしよに柿をもぎつつ柿をたべつつ
[#ここで字下げ終わり]
十月廿九日
けふもよいお天気で。
一雨ほしい、畑のものがいら/\してゐる。
憂欝、倦怠、焦燥。――
掃く、拭く、そして身心を清める。
とう/\水までなくなつた、米もおぼつかなくなつた。
待人来るか来らぬか、敬坊は、樹明老は。――
けふから貰ひ水、F家へいつたら誰もゐない、四季咲の牡
前へ
次へ
全92ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング