をとつて寝た、読むに層雲(今月は早くて来月号が今日来た)があるのはありがたい。
いよ/\閉戸子となつた、そして時々自分をあさましいと思ふ、あさましい事を考へるから、そして行はないでもないから。
石蕗の花のよさを知つた、野に咲いてゐても、また、床に活けてあつても。
りんだうの花を一つ見つけた、さつそく仏前にそなへた。
柿の木を所有するものは、その実に囚へられて、柿のうつくしさを知らない、あはれむべし。
さみしさは心の底から湧く、環境のためでない、境遇のためでない、性格のためである、センチと笑はれても仕方がない。
ゆふべ、あんまりさみしいから柚子をもいだ、ゆかしい匂ひかな、柚子味噌をこしらへるつもりだつたけれど、めんどうくさくなつたのでやめた、それでもすこし慰められた。
苦があつて句はない、苦を観照するだけの余裕を持つて初めて句が出来る。
もう醤油がなくなつた(それを買ふことが出来れば問題はない)、まだ味噌がある、塩がある、菜葉もあれば塩魚もあるぢやないか。
寒いのに冬物がない、ふつと思ひついて、レーンコートを下に着込んだら、めつきりあたゝかくなつた、このコートは関東大震災の時にS君から貰
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