こゝの井戸はもう水が涸れて濁つて、とても生水は飲めない)。
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・暮れてなほ柿もいでゐる
・明けるより柿をもぐ
・柿をもぐ長い長い竿の空
 あるけば寒い木の葉ちりくる
・秋のすがたのふりかつ[#「つ」に「マヽ」の注記]てはゆく
・ひとりの火がよう燃えます(改作)
・法衣ぬげば木の実ころころ(〃)
・更けてあたゝかい粥がふきだした
 夜をこめて落ちる葉は音たてゝ
[#ここで字下げ終わり]
あぶら虫にはとても好感は持てないけれど、あぶら虫の恋を考へるとき、いぢらしいやうな、おかしいやうな気分になつて殺したいところを逃がしてやることもある。
夜は読書、一茶を読んだ、私は趣味的に彼をあまり好かないけれど、彼の作品にはあたまがさがる(さげるのぢやない)。
また風邪をひきそへたらしい、ひきそへ、ひきそへ、ひきそへて、さて、その風邪はどうなる?

 十月廿七日

もう足袋がほしい、つめたさを感じつゝ、明星のまたゝき、片われ月の寒いかげを眺めた。
しかし、日中はよいお天気で、日向ぼつこがうれしい。
防府まで出かけるつもりだつたが(いふまでもなく金策のために)、頭痛悪寒がするので、床
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