きた裏藪に戸をしめる
しぐれる落葉はそのまゝでよし
・もぎのこされて柿の三つ四つしぐれてゐる
もうはれてしぐれの露が干竿に
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虫があはたゞしくとぶ、こほろぎの恋、かまきりの恋、いなごの恋、今は恋のシーズン、やがて凋落の季節だ。
左の親指を火傷したので、右手ばかりでいろ/\やつてみる、やつてやれないことはないけれど、不自由千万である、指一本の力、その恩恵といつたやうなことを考へさせられる、そして片手の生活といふやうなことも。――
菜を間引く、雑草がはびこるには閉口する(神仏の前には菜も雑草もおなじものだらう)。
昼飯をすましてから学校へゆく、樹明君が宿直だからである、コヽアをよばれる、コヽアそのものよりもミルクがおいしかつた。
風呂をもらふ、夕飯をよばれる(樹明君は病気で飲めないのに私ひとり飲むのはすまなかつたが)、夜になつて戻つた、菜葉をたくさんさげて。
友はよいかな、ありがたいかな。
手探りで井戸の水をくんだ、何となく思ひが深かつた。
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ふるればおちる葉となつてゐた
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あつい茶をのんで、ぢつとしてゐる、身心が水
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