てゐられないといふ、病む人に対してゐると私も病む人のやうに感じる、私だつて咳嗽で苦しんでゐるのだ、塩昆布に茶をかけては飲み、飲みして、とう/\薬鑵[#「鑵」に「マヽ」の注記]に二杯も飲んだ。
樹明君がお土産――といふより外ない――として塩鱒を二尾持つてきてくれた、早速台所につりさげる、そこらあたりが急ににぎやかになつた、うれしいなあと子供のやうによろこぶ、樹明大明神様々だ。
十時頃まで話す、話し倦くる塩[#「る塩」に「マヽ」の注記]昆布湯を飲んで。
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暗夜送つて出て長い尿する
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 十月廿四日

時雨模様、だん/\晴れて秋日和となる。
昨夜、樹明君が手をとつて教へてくれた三平汁[#「三平汁」に傍点](?)はめづらしくもあり、うまくもあつた。
今日から節食(節酒は書くまでもなし)。
時雨を聴く[#「時雨を聴く」に傍点](音の世界、いや声の世界[#「声の世界」に傍点])、私の境涯[#「私の境涯」に傍点]。
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・しぐれ空のしらみつつしぐれだした
・しぐれては百舌鳥のなくことよ
・朝からしぐれて柿の葉のうつくしさは
 しぐれて
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