はおいしかつた。
昼寝の夢を鮮人の屑買が破つた(売るものなんかあるもんかい、買ひたいものばつかりだ)。
読書、読むうちに日が暮れて夜が更けた。
たしかに私は飲みすぎる、食べすぎる、そして饒舌りすぎる。
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窓いつぱいの日かげのてふてふ
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十月廿三日
晴、朝月があつた、よかつた。
鶏の声、お寺の鐘の音、百舌鳥が啼く、虫も鳴いてゐる、朝の音楽もなか/\よろしい。
蝶が身のまはりをバタ/\とびまはつてゐたが、読んでゐる雑誌のページに卵を産みつけた、何といふ忙しさ、しかし無理もない、こんなに秋も深うなつたのだから。
午後、湯にはいつてくる、農学校の運動会でみんな行くやうだが、今の私には行くだけの興味が持てない、あたりの秋色を味はひつゝ戻つた、戻つてよかつた、樹明君が留守にあがりこんで寝ころんでゐる、彼はデリケートな部分をいためて、痛い/\と苦しんでゐる、それは罰といへば罰だが、私としては一刻も早く樹明君が健康と幸福との持主となることを願はずにはゐられない。
学校まで引きかへして、そしてまた樹明君がやつてきた、一人では気がまぎれないので、ぢつとし
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