こゝにも黄金色のかたまりがかゞやいてゐる、野の花としても、また庭の花としても賞美するに足る、すこし盛りをすぎてはゐたが、欲しいだけのものは貰つた、戻つて、ふと袖や裾を見ると、草の実だらけだ、これは一本まゐつた、花だけ求めたのはやつぱり人間のエゴだ。
長崎の十返花君から、枇杷二部とハガキ、同誌はこぢんまりと気がきいてゐたが、どうやら気がきゝすぎてきた様子、もう止めるかも知れないといふ源[#「源」に「マヽ」の注記]因の一つはこゝにあらう。
百舌鳥がしきり啼く、そして私は胃が悪い、むろん痔はよくない。
昼御飯を食べてから湯屋まで出かける、今日も道すがら、みぞそばの美にうたれた、帰途は前の家のF老人と道連れになり、世間話をつゞけた。
空家の庭園から、コスモスと鶏頭とを盗んできて仏様にあげる。
北九州の炭坑町で、酌婦と坑夫とのダイナマイト心中があつたさうな、いかにも北州[#「北州」に「マヽ」の注記]らしい、そして病酌婦と失職坑夫との心中らしい。
塩昆布をこしらへる、昆布五銭、醤油十銭。
柿と娘、――これは日々見る活画題だ。
町のお寺で幼稚園の遊戯を見物してゐるうちに、涙ぐましくなつて閉口した、白
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