)私は支度、君は街まで一走り。
いゝ酒だつた、罐詰もうまかつた、私が大部分平らげた、そしてずゐぶん酔うて、君を困らしたらしい、例の常習的変態デマをとばしたのだらう、とにかく、私は親友に対しては駄々ツ児だ。
幸にして(樹明君が今夜はいつもとちがつてしつかりしてゐた)ワヤにならなかつた、ありがたかつた。
送つて出て月がある、――それから、粥を煮て食べた、このあたりの行為は夢遊病者に似てゐる。
     就寝前の言葉として(附記)
飛躍[#「飛躍」に傍点]はなかつた、しかし、たしかに諦観[#「諦観」に傍点]はあつた、自己超越に近いもの、身心脱落らしいもの、さういふ心境への第一歩を歩んだと信じてゐる。
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・秋空、うめくは豚(追加)
・朝は陽のとゞくところで茶の花見つけた
 めをとで柿もぐ空が高い
 秋の山の近道の花をつんでもどる
・たそがれる木かげから木かげへ人かげ
[#ここで字下げ終わり]

 十月二十日

まつたく朝寝だつた、六時のサイレンで眼が覚めたのだ、それほど、昨夜は快く酔うたのである。
そしてまた、よい御飯、よいお汁だつた。
山へ石蕗の花を貰ひに行く、そこにも
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