きた、さてこのつぎには何がくるか、何もない!
出かける元気もないし、出かければロクな事はないし、それではどうするか、寝るか読むか書くか、よろしい、土いぢり草とりがいちばんよろしい。
       □
白船老から手紙と半切とが来た、これで其中庵も持つべきものを一つ持つことが出来た訳だ、多謝多謝。
だん/\晴れる、空も人も。
自から閉門を申渡して蟄居謹慎、しんみりと土に遊んだ[#「土に遊んだ」に傍点]。
さみしいといひ、いら/\するといふ、すべてがワガママ[#「ワガママ」に傍点]だ、このワガママがとれなければ私は救はれない。
[#ここから2字下げ]
・ひとりで障子いつぱいの日かげで
・おちつけば茶の花もほつ/\咲いて
 煮えるもののかげがある寒いゆふべで
[#ここで字下げ終わり]
しづかに読む、そして読経、しづかに暮れていつた。
[#ここから2字下げ]
・みほとけのかげにぬかづくもののかげ
    □
・闇夜かへつてきてあついあついお茶
・秋の夜ふかうして心臓を聴く
[#ここで字下げ終わり]

 十月十九日

曇、雨が近いらしい。
けさも朝寝、といつても五時過ぎ、咳で覚めたのである、いやな
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