夢も見たのだ、小人夢多し、是非もないかな。
火を焚くことが上手になつた、習ふより慣れろだ、今までは木炭で自炊してゐたのだが。
百舌鳥が啼く、サイレンが鳴る、両者は関係がないけれど、私の主観に於ては融合する、百舌鳥は自然のサイレン、サイレンは人間の百舌鳥か。
苦茗、といふよりも熱茗をすゝる、まづ最初の一杯を仏前に供へることは決して忘れない、私にも草庵一風の茶味があつてもよからう、しかし、酒から茶への転換はまだ/\むつかしい。
寒い、ほんとうに寒い、もう単衣でもあるまいぢやないか、冬物はこしらへて送つてあげますといつてよこした人が怨めしい、といふのも私の我儘だけれど。
今日の御飯は可もなく不可もなし、やつぱり底が焦げついて香しくなるやうでないとおいしくない。
朝課諷経は食後にして、大根おろしに納豆で食べる、朝飯はいちばんうまい。
畑を見まはる、楽しみこゝにあり、肥料をやつたので、ひよろひよろ大根がだいぶしつかりしてきた、白菜はもう一度間引しなければなるまい、ひともじ[#「ひともじ」に傍点]の勢のよさ、何とほうれんさうが伸ぶことぞ、新菊は芽生える/\。
掃く、柿の落葉だけだ、雑草はそのまゝに
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