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・あぶらむしおまへのひげものびてゐる
あかつきのあかりで死んでゆく虫で
・水音のしんじつ落ちついてきた
もうはれて葉からこぼれる月のさやけさ
柿がうれてたれて朝をむかへてゐる
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・露も落葉もみんな掃きよせる
・秋の朝の土へうちこみうちこむ
・朝の秋風をふきぬけさせてをく
・秋空の電線のもつれをなをさうとする
・枇杷から柿へ、けさの蜘蝶の囲はそのまゝに
浜納豆到来、裾分して
秋空、はる/″\おくられて来た納豆です
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酒壺洞君からやうやく手紙が来た、無論、よいたよりだつたが、君の身辺に或る事件が起つて、それがためにこんなにおくれたと知つては、ほんとうに気の毒である、才人酒壺洞君にもさうした過失(勿論それは君自身の犯したものではないけれど)があるとは、まことに世の中は思ふまゝにはならぬものだと、改めて教へられた。
句集代の小為替を現金に代へて貰つて、いろ/\の買物をする、そして最後にはワヤまで買つてしまつた、そのワヤは私としてあまりに非常識な、そしてあまりに高価なものだつた、幸にして冬村君の好意によつて非常事を処理する
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