一輪※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]のコスモスと代へる、まことに茶の花は床しい花である。
蛇が蛙に喰ひついてゐた、あんなに小さい蛇があの蛙を犠牲にしてゐることは、いかに彼の闘争心が強いかを如実に示してゐる、しかし彼に難はない、彼は生きなければならないから、生きずにはゐられないのだから、ことに冬眠の前である、できるだけ栄養分を摂取しなければなるまい、彼は生存の純一な慾望[#「生存の純一な慾望」に傍点]のためにのみ蛙を殺したのである、人間ほど卑劣でない強慾でない。
松の会の同人(平野多賀治)君から、浜松名産『浜納豆』を贈つて下さつた、さつそく頂戴する、これで一杯も二杯も三杯も飲めるといふものだ、私一人には多すぎるから、樹明、冬村、両君にお裾分する(関西にはあまり納豆が喜ばれない)。
Jさんがよい菜葉を持つてきて下さつた、半分は惣菜に、半分は漬物にする、今日はいろ/\のものを頂戴する日だ。
午後は文字通りの一浴一杯。
夜食は菜葉粥、近来の御馳走であつた。
いざよひ月がおもむろに昇る、それを眺めてゐると、何となく人恋しくなる。……
ずゐぶん長く遊んだ、三
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