はないが、のんびりした一夜だつたよ。
どうもいけない、回光返照すべし、退いてもう一度、自分を、自分の周囲を見直すべし。
せつかくの浄財を不浄化しては罰があたるぢやないか、恥づべし、恥づべし。
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・何もない熟柿もいであげる
・壺のコスモスみんなひらいた
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今日の買物を附け添へて置かう、こんなにつゝましくして、そしてあんなにやりつぱなしだから助からない!
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一、 七銭  赤味噌  百目    一、七銭  はぎ  五匁包
一、 六銭  醤油   二合    一、五銭  大根  三本
一、 二十銭 焼酎   二合    一、九銭  ハガキ 六枚
一、 七銭  バツト  一     一、十銭  並そば 二杯
 〆金 七十一銭也
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 十月十四日

曇、折角の豆名月が台なしになつてしまつた。
終日憂欝、畑の草をとつてごまかす、大根おろしはうまかつた、間引菜の味噌汁も。
ほうれんさうがほつ/\芽をふいてきた。
柿の葉がだいぶ赤らんできた。
J夫人が子供を連れて柿もぎに来た、子供はうるさい、柿の落葉よりも。

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