てゐるのは――そしてそれが楽しみのすべてといつていゝが――朝は郵便、それから新聞、それから友人だ、今日はその三つがめぐまれた。
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・人がゐてしぐれる柿をもいでゐた
・庵のぐるりの曼珠沙華すつかり枯れた
・つゆくさ実をもち落ちつかうとする
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夜はまた粥を煮て食べた、私には粥がふさはしいらしい、その粥腹で、たまつた仕事をだいぶ片付けた。
これでまづ今日いちにちのをはり、あなかしこ/\。
横になると咳が出る、絶え入るばかりに咳き入るといふが、じつさいさうである、咳き入つてゐると、万象こんとんとして咳ばかりになる、しばらくして小康、外へ出て歩く、何とよい月だらう。
十月十二日
好晴、まことに秋空一碧だ。
急に右の胸がいたくなつた、風邪をひきそへて、あんまり咳をしたためらしい、だるいからすこし散策する(この程度の病気を持つてゐることは、私のためには却つて可いかも知れない)。
製材所の仕事を観る、よく切れる鋸だな。
或る友への消息に、――
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……私もだん/\落ちついてきました、そして此頃は句作よりも畑作に身心をうちこんでをり
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