紙と熟柿と代へていつた
垣のそとへ紫苑コスモスそして柿の実
秋風、鮮人が鮮人から買うてゐる
・ふるさとはからたちの実となつてゐる
・わが井戸は木の実草の葉くみあげる
・あの柿の木が庵らしくする実のたわわ
・そこらいつぱい嫁入のうつくしさ干しならべてある
[#ここで字下げ終わり]
これで午前の分をはり、めでたし/\。
どうも腹が空つてくると飲みたくなる、空腹へギユツとひつかける気持は酒好きの貧乏しか知らない、そこでまだ早いけれど夕飯にして、また出かける、どこへでも行きあたりばつたりに行くのである、いはゞ漫談に対する漫歩[#「漫歩」に傍点]だ。
一時間ばかり歩きまはつて戻つてくると、誰やら庵の前で動いてゐる、樹明君だ、忙しい中を新菊を播いて、苣《チサ》を植ゑてくれてるのである、ありがたし/\。
飲む酒も食べる飯もないから、辛子漬でお茶をいれてあげる、辛子漬の辛いのも一興でないことはあるまい。
ばら/\としぐれた、今夜もしぐれるらしい、かうしてしぐれもだん/\本格的になつてゆく。
貧すりや鈍するといふ、まつたくだ、金がないと、とかく卑しい心が出てくる、自家の醜劣には堪へがたい。
毎日待つ
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