払だ、支払ふとしたら、いらないといふ、あげますといふ、彼は私の風采(破被布に利久帽だ)を見て、おせつたい[#「おせつたい」に傍点]するつもりらしい、そこで妥協してお賽銭一銭あげて、ありがたく万事解決した、彼は若い鮮人だつた、鮮人から報謝をうけたのはこれが二度目だ、一度は行乞流転中にどこかで鮮人の若いおかみさんから一皿の米をいたゞいたのである。
昨夜の事を考へる、草庵――時雨――白粥――はあまり即きすぎて句にもならないが、それは涙ぐましいほどの情愛だつた、うれしかつた。
駅の物売の声がよくきこえる、風向のよい夜などはハツキリきこえる、だが何といふ言葉だかはあまりよく解らない、よく解つては困ります、べんたう、すし、ビール、まさむね、サイダーなどとやられては、食べたくなつたり、飲みたくならうではないか、風よ、向うへ吹け。
山東菜を漬けてをいたのがちようど食べ頃となつた、うまい、うまい、これからは自分で作つて自分で漬けて食べられます。
三八九の原稿整理。
私の事を私よりも周囲の人々がヨリ心配して下さる、私はあんまりノンキかも知れない、ノンキなルンペン!
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郵便やさん、手
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