]だ、参。
一人はよいかな、日向ぼつこしてゐる私は一人だよ。
湯屋まで出かける、イージーゴーイングな自分に鞭ちつゝ早々帰庵した。
ゲルトなし、アルコールなし、エゴなし。
Sさん一家族みんなで柿もぎに来た、子供はうるさいね、裏畑の柿をもぐべく、近所の娘さんが二人連れで来た、ナツメを下さいといふ、サア/\おとりなさい、いんぎんに礼をいつて行つた、若い女性はやつぱりわるくないな。
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・酔へばやたらに人のこひしい星がまたゝいてゐる
 裏からつめたく藪風のふきぬけてゆく
・わかれてもどる木の実をひらふ
・秋あつくせりうりがはじまつた
・月に咲けるはそばのはな
・寝るよりほかない月を見てゐる
  (放哉坊の句とは別な味があると思ふが)
[#ここで字下げ終わり]
昨日の買物(此言葉はよい)、――
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一、端書切手     十銭(私の買物はいつでも郵便局からはじまる、何故!)
一、線香 一     六銭    一、茶 一袋     十銭
一、煙草([#ここから割り注]バツトナデシコ[#ここで割り注終わり])十一銭    一、小バケツ    十二銭
一、いりこ五
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