も行けない(それでもヤキモキしなくなつたゞけは感心)、それにしても胃袋よ、お前はたつしやでふとくなつたね!
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 墓がならびそうしてそばのはな
 大空たゞしく高圧線の列
 家がとぎれてだん/\ばたけそばばたけ
・刈田はれ/″\と案山子である
    □
・貧乏のどんぞこで百舌鳥がなく
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(これは私自身をうたうたのではない、けふ歩いてゐるうちに、ある貧家を見た時の実感である、しかし、それがその時の私を表現してゐないといふのではない、いや、私自身を表現してはゐようが、自己の直接表現ではない)
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    □
・明けてくる熟柿おちる
 茶の木が実をもつてゐる莟つけてゐる
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(『捨てきれないもの』ありやなしや、いへいへ)

 十月八日

けさも早かつた、朝が待遠かつた、もう火鉢が恋ひしい。
だいぶ長く乞食をしたので、ちよい/\乞食根性[#「乞食根性」に傍点]が出てきて困る、慎其独[#「慎其独」に傍点]、恥づかしい。
土を運ぶ、蚯蚓の家[#「蚯蚓の家」に傍点]を破壊した。
よいたより、うれしいたより、ありがたい
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