たから、ちよいと寄つてみたといふ、忙しい/\といひながら(事実、彼は農学校の書記であり、山手の百姓であり、小郡町の酒徒であり、そして私たち層雲の俳人でもあるのだ)来庵せずにはゐられないところに(そして私自身も彼の来庵を期待してゐる)、そこに私たち二人の友情があり因縁があるのだ、私としては彼の世話になりすぎると思うてゐるけれど、彼としては私に尽し足らないと考へてゐるかも知れない(彼の場合はやがて敬治坊のそれでもあらうか)。
今日はほうれんさうを播いた、昨日のやうに二うね耕したのである(樹明兄は一気呵成に、まつたく彼らしく一うね耕してくれた)。
播く――何といふほがらかな気持だらう。
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・朝やけ雨ふる大根まかう
うれておちる柿の音ですよ
・ふるさとの柿のすこししぶくて
秋晴二句
・秋晴れの空ふかくノロシひゞいた
秋晴れの道が分れるポストが赤い
招魂祭二句
ぬかづいて忠魂碑ほがらか
まひるのみあかしのもゑつゞける
□
・秋ふかく、声が出なくなつた
道がなくなり萩さいてゐる
このみちついて水のわく
・またふるさとにかへりそばのはな
そばのはな
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