ふべし
わかれて遠い人を、佃煮を、煮る
鎌をとぐ夕焼おだやかな
いつまで生きる曼珠沙華咲きだした
藪にいちにちの風がをさまると三日月
わたしと生れたことが秋ふかうなるわたし
歩くほかない草の実つけてもどるほかない
あたたかい白い飯が在る
ふつと影がかすめていつた風
風の明暗をたどる
立ちどまると水音のする方へ道
ほんのり咲いて水にうつり
草の咲けるを露のこぼるるを
吹きぬける秋風の吹きぬけるままに
やつと咲いて白い花だつた
落葉の濡れてかがやくを柿の落葉
悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる
ふるさとの土の底から鉦たたき
月からひらり柿の葉
何を待つ日に日に落葉ふかうなる
涸れてくる水の澄みやう
草の枯るるにみそつちよ来たか
澄太おもへば柿の葉のおちるおちる
風は何よりさみしいとおもふすすきの穂
産んだまま死んでゐるかよかまきりよ
けふは凩のはがき一枚
草のうつくしさはしぐれつつしめやかな
洗へば大根いよいよ白し
しぐるる土をうちおこしては播く
自嘲
影もぼそぼそ夜ふけのわたしがたべてゐる
冬木の月あかり寝るとする
ひよ
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